注文住宅を建てるためのベストな土地の選び方
夢のマイホーム、しかも戸建ての注文住宅を建てるとなれば、家のデザインや間取り、こだわりの設備など快適な住まいの条件をあれこれと考えることでしょう。
また、家を建てる土地についても慎重に選ぶのではありませんか。ただ単に地価の高い土地を選ぶのでは、予算が大きく膨らみがち。安い土地は何かと不便が出てきます。
そこで失敗しない土地選びとしては、項目ごとで優先順位をつけて、より理想のマイホームになるように家族で相談し合うことをおすすめします。
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1. 法的な制限
土地選びの基本として、まずは住居用の土地であるかどうかを確認します。場所によっては、法律で建物を制限したり、禁止している土地があります。
基本的に農業用地には住宅をつくれない

田んぼや畑が広がる地域では、まず農業用地として法的制限がされていないかどうかを確認しましょう。地目(土地に関する法的な利用制限)が田や畑、採草や放牧地などの農地とあれば、農地法が適用されて勝手に住宅を建てることができません。
また、果樹園やはす池も、農業利用している限りは農地法の対象地となります。
市街化調整区域
市街地にあっても、一部分が市街化調整区域に指定されていることがあります。この地域は当面、市街化しない予定の土地です。ですから、基本的に住居建設の許可が下りません。
一方、市街化区域とあれば、行政が積極的に市街化を進めている地域ですので、多少利便性が低い土地柄でも、将来性を考えて選ぶことができるでしょう。
工業専用地域
工業用の土地に指定されていれば、やはり住宅建築の許可が下りません。工業を中心とした地場産業の発展を優先する土地ですから、住宅はもちろん、社宅や寮でさえ建築が禁止されています。
なお、地目については地元の不動産業者に尋ねるとよいでしょう。また、法務局(登記所・出張所)で不動産登記簿を確認するとはっきりします。
それぞれの住宅用地の法的制限に要注意
住宅用地の中から希望に合った土地を選ぶ際、候補に上げた土地の条件も確認していきましょう。
同じ住宅用地でも、それぞれの土地には細かな制限が課せられていて、その土地に建てられる建物の規模や高さなどに条件が加えられています。
住宅建設を積極的に進めている市街化区域でも、26種類の地域地区の利用規制が定められていて、土地における用途や建ぺい率・容積率・高さ・構造条件などが設けられているので注意してください。
建ぺい率・容積率

住宅を建てる際に必ず確認すべきは、その土地に定められた建ぺい率と容積率です。この2つの比率は、敷地面積に対して家の大きさを決める数値です。なお、用途地域ごとに、建ぺい率と容積率が法的に定められていて、その範囲内で住宅を建てる必要があります。
ですから、その土地に建てたいと希望する家をサイズを考えて、建ぺい率・容積率の条件にあっているかどうかを確認してください。
- 建ぺい率 = 建物面積 ÷ 敷地面積 × 100
- 容積率 = 延べ床面積 ÷ 敷地面積 × 100
※延べ床面積:2階建てなら1階の床面積と2階の床面積の合計値
建ぺい率・容積率は用地の種類で異なります。一例をあげると、戸建て住宅が建ちならぶ『第一種低層住居専用地域』では住宅の高さは10~12m程度として、建ぺい率の上限を30~60%・容積率の上限を50~200%の範囲で指定しています。
例えば、敷地面積が100平方メートル土地で、建ぺい率50%・容積率75%の2階建て住宅は次のような制限となります。
- 建ぺい率50%とあれば、建築可能な面積は50㎡まで
- 容積率75%とあれば、1階部分が50㎡・2階部分が25㎡とできる
※容積率は全床面積の比率なので、1階と2階と3階としてもその範囲内で自由に設計できる
住宅用地には前面道路の制限がある

上のイラストにあるように、都市計画区域内の住宅用地では、原則として土地の前面が道路に2m以上の幅で接していないといけません。住宅密集地ではこの全面道路が2mに満たない土地もありますので注意しましょう。そういった土地には住宅が建てられません。
なお、接するべき道路は、原則4m(6m)以上あることも条件付けられています。道路は公道でも私道でも良いですが、サイズが制限されている点に注意です。詳しくは地元の不動産などに相談すると良いでしょう。
2. 用途地域
土地を選ぶポイントは他にもいろいろとあります。先にも少し触れましたが、土地にはそれぞれ用途地域があって、どのような建物が建築可能かが制限されています。
ですから、マイホームは一階を駐車スペースや物置にして、2階と3階を居住スペースにしたいなどと望んでいても、用途地域によって出来ないこともあるのです。
土地購入の際には、必ずその土地の用途地域を確認しましょう。
第一種低層住居専用地域
戸建て住宅や3階建て程度のマンションなど、低層住宅のための土地です。基本的に高さ制限が10mや12mになっていて、それ以上高い建物の建設は禁止されます。
この地域は閑静な住宅街として利用されることが多く、治安が良い場所で落ち着いて暮らしたい家庭に人気があります。ただし、駅から離れているケースが多く、マイカーやスクーター、自転車が必要かもしれません。
第二種低層住居専用地域
同じく低層住宅用の地域で、高さ制限は第一種低層住居専用地域と一緒です。ただし、床面積が150平方メートルまでの店舗を経営することが許可されているので、一階部分をコンビニなどの販売店や飲食店に利用することができます。
静かな住宅街でカフェやパン屋さんなど、自宅兼用のお店を開きたい人にはおすすめの地域です。
第一種中高層住居専用地域
この地域は建物の高さ制限がありません。3階建て以上の戸建て住宅に適していますし、10階建てぐらいのマンションを立てることもOKです。また、2階建て以内&床面積500平方メートル以下の商業用建物が認められています。住宅街でも、やや商業エリアの雰囲気を持つ地域です。
なお、この地域には幼稚園や小学校、大学といった学校が建てられるほか、病院や公共施設も置かれることが多いです。
第二種中高層住居専用地域
中高層建築の建物が認められている地域で、第一種中高層住居専用地域よりも店舗サイズが大きくても許可される地域です。2階建て以内&床面積1500平方メートルの大型店舗や会社用の建物を置くことができます。
その他にも第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域などがあり、用途が制限されているのでしっかり確認してから購入しましょう。
3. 災害に対する安全性
日本は地震の発生が多く、自然災害大国ともいわれています。家づくりにおいて地震対策への意識が強まっていますが、土地の選び方にもこだわりたいもの。
災害に強い土地を選んで家を建てることができれば、家族みんなが安心して日々の暮らしを営んでいけます。そのためには、災害に強い土地とはどういったものかを知ることが重要です。
ここでは、災害に強い土地の選び方について解説します。
洪水に対する考慮
近年は毎年のように国内で集中豪雨が発生し、水害における被害で大事なマイホームを失うケースが増えています。そこで土地選びでは、水害リスクの低い地域かどうかも気にしておきましょう。
国内の水害パターンは、主に次の2つです。
- 河川の堤防の一分から濁流が溢れて浸水(洪水氾濫・外水氾濫)
- 下水道や側溝が満タンになって溢れ、その一帯が浸水(内水氾濫)
国内インフラのうち、下水道や河川の護岸は昭和の成長期に作られたものがほとんどです。ですが、その時代と現代では気象条件が異なっていて、大雨や台風のスケールが一段増していることを考慮しなくてはなりません。
河川の周辺地域や地面の低い地域では、大量に降った雨が集中して貯まるため、洪水や内水氾濫が起きやすい傾向があります。
そこで、地域のハザードマップや国土交通省ハザードマップポータルサイトを必ず確認してください。その中で危険度の低い土地を選ぶのがポイントです。
なおハザードマップのチェック方法ですが、色分けでリスク度が表示されています。
無 色 |
浸水しない |
黄 色 |
想定浸水深さ0.5m未満 |
緑 色 |
想定浸水深さ0.5~1.0m |
薄い青 |
想定浸水深さ1.0~2.0m |
濃い青 |
想定浸水深さ2.0~5.0m |
紫 色 |
想定浸水深さ5.0m以上 |
あくまでも目安ではありますが、少しでも被害リスクの低い土地を優先してください。
地震に対する考慮
日本は地震大国といわれるほど地震多発国です。マイホームの建設では耐震性の高い建物にすることはもちろんですが、地盤が安定した土地を選ぶことも身の守りになります。
地震の影響が小さい土地の選び方は次の3ポイント。
- 地盤チェック:活断層がない・地盤が硬い・地下水など地盤沈下の心配がないなど
- ハザードマップでチェック:地震の危険度と 液状化の危険度をチェックする
- 国土交通省のツールで地盤・地震・災害リスクをチェック
以上のチェックは、国土交通省の公式サイトや防災科学技術研究所の公式サイトで提供されている災害チェックツールで確認できます。
4. 周辺環境
さて、実際にマイホームで生活する際に、家族全員が快適に安心して暮らすためには家の周辺環境もチェックしておきたいところです。
治安
街の治安を確認するのは非常に重要なことです。ネットの口コミや地域の紹介ブログなどを読んで、事前に情報収集しておくと良いでしょう。そして、その情報を確認するために、自分で街を歩いて見るとよく理解できますし、おおよその安全性が確認できて安心です。
チェックポイントは次の5つ。
- 交通事故の発生件数と発生か症の確認(警察署などで尋ねる)
- 周辺道路が速度制限・ゾーン30になっているかどうか・交通量は多いか
- 周辺のコンビニの様子(ゴミ箱が店外置いてある・若者のたまり場になってる)
- 子供にとって危険な場所(放置された空き家や資材置き場など)はないか
- 近隣に繁華街(パチンコ店や風俗店など)がないか、新規出店の可能性は?
隣にどんな人が住んでいるか
周辺に住んでいる人もさりげなくチェックしましょう。長期に暮らす場所ですから、近隣トラブルの可能性を判断するのも重要です。人間関係はとても難しく、表面上ではなかなか分かりにくいものですが、少なくとも自分や家族と穏やかな関係が保てないような雰囲気があれば、注意して選択する必要があるかもしれません。
騒音・振動
閑静な住宅街といっても、場所によっては車の走行で振動が響いてきたり、隣の家の騒音が酷いなどの問題があります。
これも、実際に現場でチェックすると良いでしょう。日中と夜間を確認するようにおすすめします。
公園・緑地など
マイホームの周りに、広々とした公園や緑豊かな緑地があると日々の生活が豊かになります。小さな子供がいる家庭なら、子どもたちが楽しそうに遊んでいるような安全な公園が近所にあると良いでしょう。
また、ジョギングや散歩がゆっくりと楽しめる緑地や自然公園があるならば、日々のストレスを解消し、心をリフレッシュできることでしょう。そういった公共の場所が整っていると、マイホームの快適性も一段アップするものです。
買い物
生活用品や生鮮食品などが過不足なく購入できる商業施設が近場にあると便利です。また、大型のショッピングモールやデパート・専門店が揃っていて、買い物が楽しめると、それだけで生活が楽しくなるものです。
住宅街であれば、マイカーでの買い物になることもありますが、車でも徒歩でも10分圏内に商業施設があると便利です。
娯楽施設
娯楽施設に関しては、必ずしも近場にある必要はないかもしれません。スポーツやアウトドア系の娯楽施設ならば、近隣にあると趣味を楽しむチャンスが広がりプラス要素でしょう。
しかし、ゲームセンターやカラオケ店、ボーリング場などのレジャー施設の場合は、そこにたくさんの人が集まりますので、ある程度の距離を取った方が安心です。
このように、周辺環境がどうなっているのかも丁寧に確認しておくと、実生活が始まった後の満足な生活が期待できます。
5. 子育て
小さなお子さんがいる家族ならば、子育て環境についても確認しておきたいところ。健やかに成長できる地域であるかどうか?教育や治安など、具体的にチェックするようにおすすめします。
保育園の入園率
都市部では保育園の待機児童の問題があります。共稼ぎ世帯では、平日に子供を保育園にあずけ、安心して仕事をしたいことでしょう。自分の子供に適した保育園をみつけたら、そこの入園率も確かめて、ちゃんと席が確保できるかを確認しましょう。
また、保育園や幼稚園の状況もしっかりチェック。子供たちがどんな様子で過ごしているか、教育面はどうか?など、チェックポイントを絞っておくのも肝心です。
学校の通学距離
地域のどこに保育園や幼稚園、小中学校があるかも重要です。理想は子供の足で10~20分あたりに点在していること。場合によっては電車やバスでの通学になりますが、安全に通学できるかどうかを見極めてください。
学校の校風
小中学校ともなれば、大人数での集団生活になります。子供にとっては不安と心配が生じる友だち関係ですので、学校の事業風景などを事前に確認すると良いかもしれません。
教育方針や学業レベルも大事ですが、それ以上にお子さんの心の平安を優先したいもの。安心してのびのび成長できるような、そんな学校を選びましょう。
6. 建築条件付きか
土地によっては建築条件が付随している場合があります。この建築条件付きの土地では、あらかじめ決められた施工会社にマイホームの建築を依頼しなければなりません。しかも購入3カ月以内と期間指定されるケースもあります。
もちろん、指定業者が依頼側の希望を真摯に対応し、しっかりとした技術で建ててくれれば問題ありません。また、費用面でも納得がいけば良いのですが、建築条件付きの場合は割高になってしまうリスクもあるのです。
そこで、土地を選ぶ際は建築条件が付いているかのチェックも忘れずに!
7. 場所
以上の選択ポイントを十分に踏まえた上で、最後に最も肝心な土地の事情を検品しましょう。
道路付け
先にも述べた通り、住宅用地では2m以上道路に接していなければなりません。そこで道路付けですが、その方角によって利便性が変わります。
一般的には、『南側道路>東側道路>西側道路>北側道路』の順になります。
〇南側道路:南側が開けていて日当たり良好です。
〇東側道路:朝から午前中にかけて日当たりが良く、すがすがしい一日の始まりが得られます。ただし、午後は日差しが少なくなり、冬場の夜は冷え込みやすいです。
〇西側道路:午後から夕方までの日当たりは良好ですが、午前中は朝の冷えがそのまま残ります。
〇北側道路:住宅密集地では日中の日差しが少ない傾向があり、照明や暖房の費用がかさみます。
ただし、条件の良い道路付きの土地は価格が高くなるので、費用と環境とを比較して選ぶようにおすすめします。
日当たり
道路付きで日当たりが左右されますが、その他にも周囲の建物によっても大きな差が出てきますので注意してください。
実際に現場を訪ねて、日当たり具合の確認をしましょう。また、日当たり具合によってマイホームの設計も工夫しなければならないので、ここは慎重に選びましょう。
土地の形

イラストのように、整形地であればマイホームのデザインも自由に選ぶことができますし、庭やカーポートなども取りやすいので便利です。
しかしCのような旗竿地ですと、マイカーが上手く駐車できないとか、玄関まで歩きにくく、その部分の土地の利用価値が低いというデメリットがあります。またDのような変形した不整形地ですと、とにかく敷地面積が狭くなりがちで、無駄な土地ができてしまうでしょう。
8. 通勤
ベッドタウンなどの郊外の住宅地は、会社や学校への通勤・通学で公共の交通手段を利用することが多くなります。
そこで少しでも移動の負担を軽くし、疲労やストレスを蓄積させないためには、駅近・バス停近(徒歩15分圏内)で座って行けると良いでしょう。しかも満員電車で吊革に1時間も掴まっているようでは、毎日が憂うつになりかねません。
この点を踏まえて、なるべく移動が楽にできる地域を選ぶことが良いでしょう。なお、ちょっと遠距離になっても始発駅で座って行けるなら、それも得策かもしれません。
9. 確認すべきポイント
さあ、以上が失敗しない土地選びのチェックポイントです。そこで、チェックは必ず自分自身が現場を訪ねて、自分の目で最終確認をするようにおすすめします。
出来れば、朝の時間帯・昼の時間帯・夜の時間帯をそれぞれ確認すると土地の状況や周辺環境などが実感できます。
なお、通勤・通学経路も自分の足で確かめるようにおすすめします。ただ地図で確認するだけでは、本当のところは分かりません。実際に歩いて始めて、危険な個所やたいへんな部分が見えてくることを忘れないでください。
10. まとめ
夢のマイホームを建てるのに最適な場所選び。この段階から夢物語はスタートしています。ひとつひとつ希望条件をクリアして、いくつか見つけた候補地を絞り込む時、いちばん大切なことは優先順位を決めて、ポイントを付けて決めること。
なお、優先順位の付け方は、ぜひ家族全員で相談して決めるようにおすすめします。