せっかく注文住宅をつくるなら吹き抜けをつくるべきか? せっかく注文住宅をつくるなら吹き抜けをつくるべきか?

先に結論から申し上げますと、”吹き抜け”構造の家にはデメリットもありますが、それを上回る魅力が沢山あります。一生に一度の注文住宅をつくるのなら、こだわりの吹き抜け構造を採り入れる事を検討してみる価値はあります。

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  1. 吹き抜けのメリット
  2. 吹き抜けのデメリット
  3. 最大限に吹き抜けを活かす為の注意点
  4. メリット・デメリットのおさらい
  5. まとめ

 

1. 吹き抜けのメリット

吹き抜け構造の家には、見た目のオシャレさ以外にも実用的なメリットが色々とあります。順番に紹介していきます。

 

開放的で広々とした空間になる

人の感じる空間の近くは、縦×横×高さです。吹き抜け構造の家は高さが十二分に確保されるので、広さを存分に感じる事が出来ます。

 

家全体の雰囲気がオシャレになる

”吹き抜け構造”とは、一言で言うと、1階と2階を隔てる天井、床が無く、上下階が一体化したつくりの建物の事です。その最大の特徴は開放感で、家の中に居ても大きな空間の広がりを感じる事が出来ます。

天井が高く、人の目線から遠く離れる位置になるので、非常に開放感を感じられる家になります。1階の天井、2階の床部分が無いと言うだけでも普通の家とは異なる、オシャレな空間を演出できますが、吹き抜けの高い位置に窓を設けるか、あるいは天窓を設けると、1階に居ても視界が外まで広がるので、更なる解放感を得る事が出来ます。

 

採光に優れる

上下階を隔てる天井と床が無い事で、窓から取り込んだ光が家の隅々まで照らしてくれる明るい家になるという事です。建物が密集している地域では特に、お隣の建物との間隔が近い為、普通の家だと、窓から取り込んだ光は家の窓際しか照らしてくれません。しかし、吹き抜け構造の家だと、窓から取り込んだ光は家の奥の床まで照らしてくれます。

 

2階に居る子供とコミュニケーションを取りやすくなる

吹き抜け構造の家ならば、2階の子供部屋に居る子供に、1階のリビングやキッチンに居る親から、直接呼びかける事も出来ます。同じ家の1階と2階に居ても、コミュニケーションが取りづらくなるという心配はありません。

 

子供の居る気配を1階でも感じる事が出来る

また、吹き抜け部分を通して、例えば2階に居る子供達の気配が1階まで伝わってきます。大きな声を出せば聞こえますので、家の中の別の階に居ても安心して生活する事が出来ます。

 

換気がしやすい

吹き抜け構造の家の特徴として、換気しやすいという事が挙げられます。1階から2階へと空気が流れる通り道となる為、上下階の空間が吹き抜けを通して繋がった家になるという事です。

窓や玄関から取り込んだ風が、2階の窓や天窓から出ていき空気が家全体を通り抜けるので非常に風通しの良い家になります。天井にシーリングファンを取り付けると空気の流れは更によくなります。

 

2. 吹き抜けのデメリット

ここまで吹き抜け構造のメリットを紹介してきましたが、デメリットももちろんあります。ご紹介しましょう。

 

冷暖房の効率が悪くなる

家を吹き抜け構造にすると、一般的に冷暖房の効きは悪くなると言われています。これは、暖かい空気は部屋の中の上の方に溜まり、逆に冷たい空気は部屋の下の方に溜まるという現象によるものです。

この現象への対策としては、天井にシーリングファンを備えて空気を攪拌(かくはん)したり、床下に床暖房を備えたりする必要があります。吹き抜け部分の天井に天窓を備えて、シーリングファンを設置できない場合は、サーキュレーターなどを置いて空気を循環させる事でも対処できます。

 

光熱費が高くなる

吹き抜けがある家は冷暖房が効いてくるまでに時間が掛かるので、家の中に吹き抜けをつくる場合は、断熱性をしっかりと保ち、家の中全体を空調で管理する必要があります。また、吹き抜け部分の屋根は”軒を深く”し、夏は太陽が高い位置にあるので、窓から入る日差しを遮り、冬は太陽が低い位置にあるので窓から太陽の日差しを家の奥まで取り込めるようにする工夫が必要です。

 

2階が狭くなる

吹き抜け部分を設ける為に床をつくらないので2階部分の床面積はその分、小さくなります。家族が大勢居て、その分部屋を多く確保しなくてはならないというケースだと、吹き抜け構造との相性はあまりよくないと言えるかもしれません。

 

吹き抜けの部分の窓ガラスの掃除や、電球の交換が難しい

せっかくの吹き抜け構造なので照明もオシャレに、天井に埋め込むタイプのダウンライトや、壁の高い位置にペンダントライトを設置したいと言う人も多く居ると思いますが、通常の住宅と比べた場合、吹き抜け部分は、窓の掃除や電球交換の際には手間が掛かります。

吹き抜け部分の天井は高いので、自分では窓の掃除や電球の交換は難しくなります。特に家の北側に設けた吹き抜けの窓には、結露が生じやすく、これを放置するとカビが生える原因となります。

その為、小まめな掃除が必要となるのですが、吹き抜けの天井や窓まで届く脚立を用意して自分で清掃などの作業をする場合、かなりの高さとなるので、万が一倒れるとケガをする心配があります。

始めから交換の要らないLED電球を使うか、窓やシーリングファンの清掃は専門の業者へ依頼する必要があります。家を建てる際に、その住宅会社や工務店などに、アフターサービスとしてそれらを依頼できるのか確認しておくと安心です。

その際、どれくらいの費用が掛かるのかも後々重要なポイントになりますので、疑問点はきちんと質問する様にしましょう。

 

1階の音や臭いが2階にも広がってしまう

通常、リビングやキッチンは1階に設ける事が多いと思いますが、そこの物音や臭いが吹き抜けを通して2階へも広がってしまいます。生活習慣の異なる家族が共に暮らす、2世帯、三世帯の住宅などでは、寝室を吹き抜け部分から離れた位置に設ける、などの配慮が必要となります。その他、吸音材を使って音の響きを抑える事も可能です。

 

子供の転落のリスクがある

小さなお子さんやお年寄りがご家族に居る場合は特にそうですが、万が一の転落には十分注意する必要があります。

 

3. 最大限に吹き抜けを活かす為の注意点

せっかくの吹き抜け構造を活かす為には、注意するべき点がいくつかあります。ここから吹き抜けを活かす為の注意点を紹介します。

 

吹き抜けの位置が重要

せっかくの吹き抜けに設けた窓と、奥の壁との間隔が近すぎると、家の奥まで十分な明かりが入らなくなってしまいます。窓は大きくても、吹き抜け部分の奥行きが狭いと、明かりは家の奥にはほとんど届きません。吹き抜けを家に取り入れる際には、壁との間隔を十分開ける事、梁などの出っ張りが多くない事に留意する様にしてください。

吹き抜けの最大の特徴である、開放感を重視するのであれば、理想は吹き抜けの部分をできるだけ邪魔するものの無い、広いスペースを確保する事ですので、1階の外壁に沿って吹き抜けとするのが良いとされています。その際、壁のラインを直線的にする事を意識すると尚良いでしょう。

また、吹き抜けに窓を多数設けて明かりを多く取り込む際には、高い位置と低い位置両方に窓を設けると空気が循環しやすくなります。さらに、窓の大きさ、高さを揃える事で統一感を出す事が出来ます。逆に窓の大きさや高さがバラバラだと全体的にまとまりの無い印象を与える事もありますので、注意しましょう。

窓を大きく取る事で、採光性は良くなりますが、家の中で日焼けするのが心配だと言う人は、窓ガラスをUVカットガラスにするか、普通のガラスにUVカットフィルムを貼る事で解決できます。

高い位置の窓にカーテンやブラインドなどを付ける場合は、窓から紐を垂らして操作する事になりますが、その場合、窓の位置をよく考えていないと1階のリビングの中央に紐が垂れている、という様な状態になります。それを防ぐ為には窓を設ける壁の位置をよく考えて決めるか、カーテンやブラインドを電動にする事で解決します。

家の中で過ごす時間のプライバシーを重視したい、解放的な感じはそれほど重視しないという場合は、そもそも吹き抜け構造を家に取り入れる必要は無いという見方も出来ますので、家の設計を依頼する際には自分が何を重視した家に住みたいのかを具体的に考えておきましょう。

 

実は玄関の吹き抜けはおすすめできない

家の中の、ほんの一部だけを吹き抜け構造にしたい、玄関が暗いのは嫌なので玄関部分を吹き抜け構造にして明かりを取り入れたい、などの理由で玄関部分を吹き抜け構造にする事は、実はおすすめではありません。理由を説明します。

玄関と言うのは、家の中と外が繋がる場所で、床よりも1段低くなっている場所でもある為、家の中で最も断熱性能が低い場所となります。その部分を吹き抜け構造にしてしまうと、家の空気が全体的に冷えてしまう可能性があります。それを避けるには、玄関の土間部分にも床暖房を備えるなどの対策が必要になる為、費用がかさんでしまう心配もあります。

また、家のどの位置に吹き抜けをつくるかを考える際にポイントとして挙げられるのは、どの場所で過ごす時間が最も長いかです。過ごす時間が長い場所はリビング、ダイニング、キッチンなどではないでしょうか。玄関は過ごす時間が短い場所である為、せっかく吹き抜けをつくるのなら、リビング、ダイニング、キッチン部分を吹き抜けとする方が理にかなっていると言えます。

 

照明に要注意

家に吹き抜け構造を取り入れる際、案外悩みの種になりやすいのが、照明の配置です。

繰り返しになりますが、採光性の高さが吹き抜けの大きな特徴ですので、昼間は照明を付けなくても十二分に明るいです。しかし、日が沈んだ後は吹き抜け構造の家といえども当然、照明が必要になります。

特に複数の照明で照らす必要のあるリビングやダイニングは要注意です。部屋の中央にテーブルを置く事が多い為、部屋の真上が吹き抜け構造となる場合は、照明は高い天井から長く吊り下げるしかありません。リビングやダイニングの半分が吹き抜け構造となる場合は、それにプラスして、吹き抜けの壁に照明を取り付ける事になります。

あらかじめ、どの様な照明を使いたいのか決めている場合は、設計段階からよく話し合って要望を伝えておく必要があります。

また、キッチンが壁に面していない、アイランドキッチンにしたいという人は、換気扇やダクトをどの様に配置するかを設計段階でよく確認しておかないと、イメージとはちがう完成形となり、せっかくの吹き抜けの解放感が台無しになってしまう場合もあります。

 

4. メリット・デメリットのおさらい

最後に、吹き抜け構造のメリットをおさらいしましょう。

吹き抜け構造の最大のメリットは大きな開放感を得られる事。1階部分の天井が無く、上階の天井まで伸びる広い空間は、その家に住む者と訪れた者に大きな解放感を与えます。リビングやダイニングを吹き抜け構造にすると、広い空間でリラックスして過ごす事が出来るでしょう。

次に挙げられるのが高い採光性。全面ガラス張りや、大きなサイズの窓を高い位置と低い位置に配置して両方から明かりを取り入れられるのは、吹き抜け構造ならではで、家の中に居て日光浴を愉しむ事が出来ます。

また、家族間のコミュニケーションの取りやすさも特徴の一つです。普通の家では、1階と上階の部屋に分かれてしまうとお互いの気配を感じる事は難しくなります。吹き抜けで繋がった上下階は家族がそこに居る気配を感じられる、程よい距離感です。家族が集う場であるリビングの上を吹き抜けにする事で、効果は最大限になります。

続いて、吹き抜け構造のデメリットのおさらいです。

窓や照明の清掃やメンテナンスを自分で行う事が出来ないという事が挙げられます。窓や照明が高い位置にある為、自分でメンテナンスをする事には危険が伴います。専門業者に依頼しましょう。但し、専門業者に依頼すると当然費用が掛かります。メンテナンスにはどの程度の費用が掛かるのかは、設計段階で設計事務所やハウスメーカーに確認しておきましょう。

他にも悩みのタネとして、広い空間全体を冷やす又は暖める必要がある為、どうしても光熱費はかさむ事、1階の物音や臭いが2階へ広がり易い事、吹き抜けを設ける事で上階の床面積が小さくなる事、などが挙げられます。

 

5. まとめ

今回は、注文住宅をつくる際に吹き抜け構造を取り入れるべきか否かについて、メリットとデメリットを包み隠さずお話ししました。今回お伝えした内容を参考に、あなたの家に吹き抜けが必要かどうか、もう一度ご家族と設計士と話し合って、決める事をおすすめします。