注文住宅は実は高くない!データから読み解く価格の相場
マイホームを買うのは一生に一度の夢をかなえる、人生の大事業とでもいうべきものですよね。一生住む家だから、自分のこだわりやライフスタイルを存分に反映した注文住宅を買いたい・・・。でも、注文住宅は高いからとはじめからあきらめていませんか?
実は注文住宅は高くないのです。
その実際の裏付けとなるデータを、住宅金融支援機構の調査結果から紹介します。これを読めば注文住宅は決して特別なものでないことがわかるでしょう。また、注文住宅を安く建てるためのアドバイスもプロの立場から書かせていただきます。是非この記事をご覧いただき、100%満足の注文住宅を建てていただければ幸いです。
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1.ズバリ注文住宅の価格の相場とは
注文住宅の購入価格は、建売住宅や分譲マンションと比較しても決して高いとは言えません。これは、各住宅の購入価格相場を全国平均と首都圏平均から確認してみると分かりやすいです。
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全国の平均所有資金 |
首都圏の平均所有資金 |
土地付注文住宅 |
4397万円 |
5162万円 |
注文住宅 |
3532万円 |
3808万円 |
建売住宅 |
3495万円 |
3922万円 |
分譲マンション |
4545万円 |
4993万円 |
*住宅金融支援機構の2020年資料より
注文住宅の平均価格
土地を持っている方、あるいは購入した土地に注文住宅を立てる場合、住宅金融支援機構の2020年度資料によると全国の平均価格が3532万円とあります。首都圏では3808万円と、全国平均より10%ほど購入費が高くなる傾向です。なお、これは建物だけの費用で、土地の購入代金は含まれません。
家族みんなの夢や希望を形にするなら、やはり注文住宅が最適です。多少価格が上がりますが、分譲マンションや建売住宅より高い利便性・居住性・満足度が得られます。
次に土地付注文住宅ですが、全国平均の購入価格が4397万円、首都圏では5162万円とあります。注文住宅の平均額より850万円ほど高いですが、これで土地価格が850万円前後ということではない点に注意してください。
土地付注文住宅では、あらかじめ建築条件が設定されている土地に注文住宅を建てます。建築会社と建築期間が事前に指定されているため、一般の注文住宅よりは低コストとなります。
▼土地付注文住宅のメリット
- 建築会社や建築デザイナーを探す手間が不要
- 条件付きではあるが、設計の自由度は高い
- 注文住宅よりも低コストで、かつスピーディである
人によっては注文住宅の情報収集が難しかったり、不十分なケースもあります。選択肢が多くて選びきれない場合や、コストをおさえて希望のマイホームを造りたい方は土地付注文住宅が便利かもしれません。
住宅金融支援機構とは
マイホームを建てるなら、まず十分な資金調達が必要となります。ですが、数千万円もの資金を用意するのはたいへんなこと。住宅ローンを利用するにしても、金利が高ければ返済が苦しくなってしまいます。
そこで行政では独立行政法人・住宅金融支援機構を設置し、資金繰りの手助けをしています。住宅金融支援機構では、さまざまな金融機関を通して、金利の低い住宅ローンを提供しているのです。
『フラット35』という低金利の長期ローンはお馴染みでしょう。これは住宅金融支援機構の代表的なサービスプランです。国民の住生活向上へ貢献するため、全期間固定の低金利住宅ローンとして『フラット35』が利用されています。(*フラット35は契約者の住居用不動産を対象とし、投資物件は非対称です)
ちなみにフラット35の金利は年1.350%~年2.270%(2022年現在)で、民間の住宅ローン金利の中央値が変動型で2.475%・固定の10年タイプで3.350%と比較するとかなりの低金利でしょう。(数値は住宅支援機構の2022年データによる)
なお、住宅金融支援機構は融資保険業務として、民間住宅ローンに対して保険業務を行っています。団体信用生命保険(団信)では、ローン契約者の死亡時にローン残金の弁済をします。フラット35の場合、月の支払いに生命保険の費用が含まれるので、年払いでの保険料支払いが不要で、初期費用でのメリットがあります。
注文住宅を建てるなら、金利面でも返済面でもメリットのあるフラット35がおすすめでしょう。
年収倍率について
住宅購入の予算を考える再に、『年収倍率』を基準にするのが一般的です。この年収倍率とは、購入者(世帯全体)の年収に対する住宅購入価格の比率のことで、民間の金融機関は住宅ローンの融資額を年収倍率から考慮して査定します。
住宅金融支援機構の『2020年・フラット35利用者調査』によると、各住宅の種類における全国の年収倍率平均は次の通りです。
- 土地付き注文住宅:年収の4倍
- 注文住宅(土地代は別途):年収の7倍
- 建売住宅(土地付き):年収の8倍
- 分譲マンション(専有面積分を込む):年収の7倍
たとえば年収600万円の世帯なら、土地付き注文住宅の住宅ローンで平均4440万円ほど、注文住宅では4020万円ほどの住宅ローンが融資可能になります。これは注文住宅の購入費用平均とほぼ同額です。もちろん頭金を入れますから、ローン借入額はもっと低くできるでしょう。
なお、建売住宅ならば4080万円、分譲マンションであれば4200万円を目途にローンを組むことができるでしょう。
そこで土地付き注文住宅と建売住宅の差額ですが、単純計算で360万円です。このレベルの金額差であれば、毎月のローン返済額に大きな差額が生じないとも言えます。
ちなみに、民間の住宅ローンでは年収倍率の他に返済能力を表す返済負担率も重視します。返済負担率の相場は年収の30~35%程度です。フラット35の場合は、年収400万円未満で30%以下・年収400万円以上で35%以下と決まっていて、年収600万円の世帯であれば年間200万円以下の返済プランが可能です。
土地付き注文住宅も建売住宅でも、先の年収倍率の範囲内ならば安心の返済プランが立てられるでしょう。
建売・マンションとの比較
『注文住宅は割高だ』と考える人は多いですが、これまで見てきたように注文住宅は建売住宅・分譲マンションと比較して特に割高ではないことが分かります。その点を具体的に比較してみましょう。
▼注文住宅は建売住宅よりもコストパフォーマンスに優れている
3種類の住宅を土地込みの価格で比較しますと、土地付き注文住宅は全国平均価格が4397万円、建売住宅は3532万円で分譲マンションが4545万円です。
この中で建売住宅は注文住宅と分譲マンションよりも2割ほど安いですが、建売住宅と注文住宅では利便性や居住性・デザイン性の、どの点でも劣ることを考慮しなければなりません。
また不動産的な価値においては、註文住宅が建売住宅よりも高いこともあります。コストパフォーマンスで比較するならば、注文住宅には価格差以上のメリットがあると言えるでしょう。
▼分譲マンションは諸費用の面でコスト高になる
分譲マンションと注文住宅は購入費用がほぼ同じですが、詳細を比較すると注文住宅の方が割安感があります。
分譲マンションは間取りやデザインがすでに決まっていて、購入者の希望を反映させる自由度がありません。一方、注文住宅は土地の形状と建築に関する法的条件の範囲内であれば、購入者ニーズがかなり自由に反映される点に注目してください。
また、分譲マンションには毎月の共益費と、定期の修繕積立金の支払いが発生します。都市部では高い駐車場代もあるなど、諸費用の面でコスト高になる傾向です。
2.建売より注文住宅が高い理由
はっきり言いますと、同じような仕様の住宅であれば注文住宅と建売住宅の建築費用に大きな差はないということです。
注文住宅は設計費用がかさむ
両者の購入価格に格差が出る理由は、第一に『建築デザインを購入者の希望通りに注文する』かどうかで費用が違うからです。
建売住宅は既に設計士が建築デザインが出来上がっていて、その設計図通りに建築するため、設計料金が個数分で分割されます。一方注文住宅は、ゼロから設計を始めるため、一つ一つの注文に設計料がかかります。
ただし、一般的に注文住宅の設計料は建物の工事費総額の2~5%が相場です。注文住宅の平均価格3500万円だとしても、設計費用の相場は70万~150万円ほどです。それ程大きな差額は生じません。
設計監理料が必要
なお、注文住宅の建設工事には『設計監理』が必要です。つまり、設計士が設計図面どおりに建築されるように監査します。この設計監理料は国土交通省告示15号で定められていて、『工事金額の10%程度』の負担が必要です。
3500万円の住宅であれば350万円となり、ここは大きな出費になってしまうでしょう。注文通りの建築工事がなされるための安心料です。ちなみにひとつの住宅の工期が1000時間といいますから、時給計算すれば3500円となり、必ずしも高すぎるとは言えないでしょう。
一つ一つ仕様を決めていくので手間がかかる
もう一つ、注文住宅がコスト高になる理由があります。注文住宅ではデザイン・設計、住宅ローンなどの諸手続きの打ち合わせが長引く(数か月も)傾向にあります。建売住宅は会社のプロがそれぞれを担当し、スムーズに建設から販売、引き渡しまで完了させます。
特に細かな仕様を決定するのに、何回も打ち合わせをするのが一般的です。当然として工事期間も長くなり、費用がよりかさんでしまうのは仕方がありません。
高価な建築資材を使用する
注文住宅の場合、システムキッチンやバスユニットにこだわるケースが多く、建売住宅よりも高級な建築資材を使用する傾向にあります。ですが、同じような仕様ということであれば、仕入れコストはほとんど同じで価格差が出ることはありません。
このように、注文住宅ならではの費用が掛かることは確かですが、それでも世間が『注文は高いですよ』という程ではありません。
3.割安に注文住宅を建てるには
これまで見た通り、注文住宅が割高という話が誤解であることが分かりました。ですが、もう少しリーズナブルにマイホームを建てたいという方は次の点を考慮してみましょう。
大手ハウスメーカーと地場工務店の価格の違いとは
注文住宅をつくる会社は、大きく分けて次の3種類。大手ハウスメーカーと地元住宅会社・工務店、そして昔ながらの大工さんです。
まず初めに、この3つの業者の設計から販売、引き渡しまでの費用について確認しておきましょう。仮に3業種が、価格35000万円の住宅を販売したとします。それぞれが得る利益を比較しますと、大手ハウスメーカーの粗利益が40%、地元住宅会社・工務店が20%、大工さんが15%です。
つまり、地元建築会社や工務店、そして大工さんに注文住宅を依頼した方が、同じ3500万円の費用でも品質の高いマイホームが造れることが分かります。
ちなみに大手ハウスメーカーでは、高額なモデルハ ウス一棟を展示したり、テレビCMや新聞広告の宣伝費用が莫大に発生します。また大所帯の会社の運営費用もあります。この費用を賄う為に、粗利率の高い建売住宅を販売するわけです。もちろん、注文住宅でも粗利を大きくとるので同じことです。
一方、地元の住宅会社・工務店、大工さんは仕入れ面で費用がかさむと思われがちですが、基本的に中間マージンの少ないルートを活用し、仕入れコストの削減に成功しています。実際のところ、大手メーカーと遜色ない仕入れコストを達成しているのはすごいことです。
つまり注文住宅を割安で建てるなら、地元の建築会社や工務店、大工さんに依頼すると良いのです。
オプションをつけると高くなる
次に、費用がかさむオプション設備を厳選するようにしましょう。よく選ばれるオプションは次の通りです。
- リビングルームの床暖房・暖炉や薪ストーブ・トリプルガラスや防犯ガラス
- キッチンのパントリー・アイランドキッチン・ビルトイン食器洗浄乾燥機
- ジェットバスやミストサウナなどのシステム
- ウォークインクローゼット・ウッドデッキ
- 太陽光発電と蓄電池のシステム
まずは予算をしっかりと確認しながら、オーバーしないように注意しましょう。そして、どうしても付けたいというオプションを絞り込むように家族で話し合いましょう。
施主支給はおすすめしない
せっかく注文住宅にするのだから、自分のこだわり設備を備え付けてほしいというケースもあります。これを施主支給といって、注文住宅の依頼主が自分で準備したシステムキッチンや棚などを施工してもらうのです。
施主支給であれば、場合によっては低価格で購入できることもあります。ホームセンターのセールで掘り出し物が当たる場合もなりますが、その程度の割引は建築会社の仕入れ額と同レベルだと知っておきましょう。基本的には費用効果はほとんどないです。
また、探すのに時間と手間がかかること、不具合があれば建設会社で対応してもらえないなどデメリットが多いのでおすすめできません。
仕様決めは面倒であることは覚悟しよう
注文住宅では、細かな打ち合わせを積み重ねることで満足のいくマイホームが実現します。いくらコストがかさむからといって、仕様決めの話し合いを省略しないようにしてください。
基本的に設計士や建築会社の担当者に意見を求めることになりますが、丸投げのお任せでは注文住宅にする意味がありません。それに、マイホームを手造りする楽しさを手放すのは非常にもったいないこと。手間暇かけてこその注文住宅ですので、その醍醐味を手放さないようにしてください。
4.まとめ
高度成長期に流行した建売住宅は、半世紀もたつとただの古い家になるケースが目立ちます。また最新設備を備えた分譲マンションは、いつの時代も購入コストがかさみがちです。
ですが、自分の思いを形にする注文住宅は、たとえ年月を経ていても古めかしいとは思わないもの。愛着のある我が家として、途中で手直しをしながら大事に住む家族が多く見られます。
そんな注文住宅を建てるには、コスト面で無駄がなく、しかも施主の望みを丁寧に形にしてくれる地元地域の建築会社・工務店を頼ると良いでしょう。