近年なぜ平屋は脚光を浴びているのか?実際の住み心地とは
平屋に住んでみると様々なメリットがあることに気付きます。平屋特有のフラットな空間から生まれるメリットから建築・構造から生まれるメリットまで、多種多様に存在します。今回は平屋と2階建ての比較も含めて見ていきましょう。
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1.平屋のメリット
人生100年時代と呼ばれるようになった近年は、老後が長くなる傾向にあります。そのため老化に伴う足腰の弱さを補うため、バリアフリー等の設備を重視される方も増えてきました。特に平屋は階段などがなく、老後でも住みやすい構造です。
平屋特有のフラットな空間は人の出入りが一目でわかり、家族間のコミュニケーションも自然と生まれやすくなります。これ以外にも平屋は外出の心理的ハードルも低く、家に引きこもる人が急増している現代では運動不足解消にも繋がります。このように住まいに求める価値の変化が、平屋が脚光を浴びている最大の理由といえます。下記にて詳しく見ていきましょう。
家事が楽に行える
平屋ならではのフラットな空間では掃除・家事が楽になり、洗濯物などの重量物を担いで階段を登る必要がありません。また家事の導線も短く、スムーズに家事を行う事ができます。2階が無いので面倒な階段の掃除なども行う必要がありません。
家族とのコミュニケーションが取りやすい
平屋は家族とのコミュニケーションを取りやすいといったメリットもあります。玄関から入って目の前に階段があるような家では、帰宅後すぐに部屋に行ってしまうこともありますが、比較的人の出入りがわかりやすい平屋では、顔を合わせやすいので自然とコミュニケーションが取れます。顔を合わせる事でふとした会話などが生まれ、家庭内の状況把握にも活かされるでしょう。
バリアフリー・転落事故が無い
平屋の場合、最大のメリットとして挙げられるのが階段がないことです。後々の生活に合わせてバリアフリーに変えることができるため老後も安心です。老後が長いとされている近年では、高齢になるほど階段を昇り降りすることは大変な負担となります。さらに、子どもやお年寄りによる階段が原因の転落事故が起きる心配がありません。
特に子どもの転落事故は多く、平成30年の東京消防庁防災部防災安全課のデータによると、年齢層別搬送人員では「0~4歳」までの子どもが最も多く、2,022人が緊急搬送されています。また、同データによると発生場所別搬送人員は住宅等居住場所が半数以上を占めており、落ちる事故は8,867人にも上っています。
参考URL:救急搬送データからみる日常生活事故の実態 平成30年(PDF)
耐震性が高い
平屋は上記に記したメリット以外にも建築上のメリットが多数あります。地震大国の日本では、いつ地震が起きるかわからないので常に備えなければなりません。平屋は2階の重さがかからないので構造が安定しています。それゆえ耐震性が向上し、建築構造面で2階建ての家と比較すると、耐震性が高く比較的安全とされています。
メンテナンス費用が安い
家は資産としての価値を保つために、メンテナンスが必要となります。例えば、外壁塗装(塗り替え)や修繕の際は、足場を組む必要が出てきます。その際、平屋であれば2階建て部分の足場は必要ないのでその分、費用を抑える事ができます。
自由な設計が可能
2階建ての家は2階部分を支える支柱が必要になりますが、平屋はそれが不要なため、その分間取りの自由度が高くなります。そのため、柱や壁が少ない広々とした自由な設計が可能です。大きな開口部や開放感溢れる空間が平屋では実現できます。
勾配天井で機能性を高め、おしゃれな演出を
また、天井に勾配を作る事で開放感を演出でき、日の当たりや風の通り道をよくする事ができます。勾配天井は機能性だけでなく梁を見せた仕上げにする事で、デザイン性も高まりおしゃれな空間を作る事ができます。天井を高くする事でファン付きの照明による圧迫感もなくなり、広々とした空間が実現できます。
2. 平屋のデメリット
平屋も完璧な建物ではなくデメリットも存在しますが、ほとんどのデメリットは対策や工夫で補う事ができます。ただし、経済的なデメリットは土地・建築・建物の関係で発生します。6つのデメリットを解説するとともに、工夫・対策も併せてご紹介します。
建坪が高い
デメリットとしてまず挙げられるのが、建坪が同じ2階建てと比べて高くなる事です。2階建てと同じ面積にする場合、屋根面積と基礎面積が2倍に増えます。建築費用の大部分を占める基礎工事費用が高くなるので坪単価も同時に上昇します。
しかし、平屋には階段が無い分3~4畳程度面積が大きくなり、トイレも1つだけで済みます。そのためコストにそれほど差異があるわけではありません。また、メリットでも挙げた通り、2階建てよりも空間を自由に使用できます。
土地代が高くなる
建坪も高くなりますが、土地代も2階建てと同じ面積が必要であれば高くなります。2階建てとは違い、平屋は土地の面積がそのまま建物の面積となるので単純計算で2倍程度の土地が必要となります。高さを利用しないために生じるデメリットです。
日当たりと風通し
土地を目一杯使用して平屋を建てた場合、日当たり・風通し・外との繋がりが損なわれる可能性があります。窓を開けると目の前が道路やお隣さんだと、平屋のメリットが無くなってしまいます。
しかし、日当たり・風通しが悪いといったデメリットは、工夫次第でなくす事ができます。天窓を設置すると、中心部分に直接太陽の光をいれる事ができます。また、庭を中心に建物自体をコの字やL字型に建てる事で、日当たりと風通しの両方を十分に確保する事ができます。
このようなデメリットが生じないよう、平屋は「第一種低層住宅専用地域」に建てることをおすすめします。第一種低層住宅専用地域とは「建築基準法」に基づく用途地域の1つで、低層住宅のための地域として使用できる土地のことを指します。そのため周りの建物も高さ制限があり、先ほど述べたデメリットも解消できる地域となります。
水害への対処
平屋のデメリットとして水害が発生した際、避難が2階建てと比べると難しい事が挙げられます。2階建てだと1階部分が浸水しても2階に避難できますが、平屋だと1階部分しか無いので避難先が無くなってしまいます。日本は津波・台風などの災害が多くありその点、平屋は対応が難しくなってしまいます。
ただし、これらの災害も建てる場所によっては、全く発生しない場所もあります。平屋を建てる際は、ハザードマップなどで水害の可能性を事前に調べることを強くおすすめします。水害の恐れが無い場所に建てる事でこのような不安も解消されます。
プライバシー・防犯面
平屋はプライバシー面や防犯面でも注意が必要です。全ての部屋が1階になるので、何も工夫しないままだと外からの視線で生活空間が丸見えになってしまいます。防犯面も同様に外部の人から目につきやすいので、泥棒の標的にされやすいといったデメリットがあります。
これらのデメリットは対策する事が可能です。プライバシー面ではリビングを道路から離れた場所に設置したり、目隠しとなる塀や庭などを設置したりする事で見られ辛くする事ができます。防犯面では踏むと音が鳴る砂利を設置したり、人感センサーつきライトの設置や防犯カメラを設置したりする事で対策が取れます。
税金が高い
税金面で平屋は2階建てと比較して高い傾向にあります。土地が2階建てと比べて約2倍必要なので、固定資産税が高くなります。また都市計画税も土地・家屋の面積・価値によって評価額が変動するので、建坪や土地代が2階建てより高い平屋は都市計画税が高くなります。シミュレーションを基に比較してみます。
評価額2000万円の50坪の土地を例として見ていきます。平屋の建物評価額を1800万円として、2階建ての建物評価額を1500万円とします。税率は固定資産税1.4%とし、都市計画税が最大の0.3%として見ていきましょう。
また、両方の建物を新築で敷地200平方メートル以下として、「住宅用地の特例」と「新築住宅に対する固定資産税の減額」に該当するものとします。このような場合は固定資産税が1/6、都市計画税が1/3土地に対して適用され、新築なので建物の固定資産税が半額になります。これらを前提に比較します。
|
平屋 |
2階建て |
土 |
66,500円 |
66,500円 |
建 |
180,000円 |
150,000円 |
合 |
246,500円 |
216,500円 |
表のように新築で同じ敷地面積でも、平屋の方が高い事がわかります。これに対してメンテナンス費用が2階建よりも安くなるなど、長期的に見て様々な要素を勘案する必要があります。また、本例の固定資産税や都市計画税は自治体や年度により変更される場合もあるので、詳細はその都度調べる必要があるので注意して下さい。
3. 2階建てのメリット
これまでは平屋のメリットとデメリットを中心に解説しましたが、次は2階建てのメリットとデメリットも解説します。平屋と2階建てのメリット・デメリットを知る事で、両方を比較してご自身の住宅としてどちらが合うのかを検討する事ができます。
2階建てと平屋の大きな違いとしてあげられるのが、必要な土地の面積と高さを利用した建築スタイルです。これらの相違により、それぞれにメリットとデメリットが生じます。2階建てのメリットを3つあげ、概要を中心に平屋と比較します。
面積
平屋が土地の面積と比例して建築されるのとは違い、2階建ては高さを利用して建てられるので狭い土地でも床面積を確保する事ができます。そのため土地代が平屋と比較して安くなる傾向にあります。ただし、資産価値として2階建てを維持しようとした場合、メンテナンスなどで足場を組む必要があり、それらを加味するとメンテナンス費用は平屋より高くなります。
プライバシー・防犯
平屋のデメリットとして挙げたプライバシーと防犯の面では、2階建ては2階部分があるので泥棒や外部からの視線が入りにくいです。また、家族内のプライベート空間も1階を親世帯にして、2階を子世帯にする事で良い距離感を作る事ができます。外部と家庭内のプライバシーと防犯の両方を守る事ができます。
ただし、平屋では外部からのプライバシーや防犯は対策で補う事ができます。また家族内の距離感を取りすぎてしまうと、ギクシャクする可能性があります。平屋では自然と会話が生まれるなどのメリットがあるので、これらのデメリットは平屋がカバーできる事となります。
水害時に避難できる
災害が多い日本では災害は他人事ではなく、いつ起こってもおかしくはありません。特に水害は多く、2階建てだと一時避難先として2階部分に避難する事ができます。平屋は2階部分がないので避難する事が困難になります。
平屋ではこのような水害対策として出来ることは、ハザードマップなどを確認してから建てる事です。いくら頑丈な家を建てても自然に勝つことは難しいので、建てる前に水害の少ない地域に建てる事が大切となります。ハザードマップの確認は契約時ではなく、検討段階から確認することを強くおすすめします。
4. メリットとデメリットを勘案すると
これまで平屋と2階建て住宅のメリット・デメリットを見てきました。このようにそれぞれの利点などを考えて、今後住んでいきたい希望する間取りとライフスタイルにあった家にするために、予算などを加味して検討する必要があります。では、どのような点を比較するといいのでしょうか。
5. 比較ポイント
平屋と2階建ての比較ポイントを、大きく3つの項目に分けて解説します。家族構成・生活導線・土地の条件に分け、簡単に比較ポイントをご紹介します。ご自身の状況に近いものを、参考に見ていただけると幸いです。
家族構成
生活に大きく関わるのが家族構成です。家族構成は人数・世帯数などで分ける事ができ、人数・世帯数に応じて必要面積が変化します。また、将来を見越して必要な部屋の数を計算する事が必要となります。
平屋であれば家族と自然に会話が増える間取りですが、2階建てはコミュニケーションが取りづらくなります。これに対して2階建ては1階と2階で世帯を分ける事ができ、家庭内のプライバシーが守られます。家族構成によって平屋と2階建てどちらが良いかが大きく変わってきます。
生活導線
日常的に行う洗濯物など家事の導線は、家を建てるにあたって慎重に考慮する必要があります。人生で最も高い買い物である家は何十年と住み続けるので、日常的に行う家事の導線はとても重要なのです。また、老後のことも考える必要があります。
2階建ては階段があるので、生活導線はスムーズとは言えません。しかし、トイレ・風呂を2階に設置出来るなどの融通は効きます。これに対して平屋は生活導線がとてもスムーズであり、バリアフリーも実現可能となり生活しやすいと言えます。
土地の条件
家を建てる際は、土地の建蔽率や周囲の環境などを調べる必要があります。土地によっては建蔽率が決められており、日当たりや風通しなども建蔽率によって影響をかなり受けます。土地の値段もエリアによって大きく変わるので、家族構成も生活導線も全て考慮しながら土地の条件を比較する必要があります。
7. 平屋が脚光を浴びている理由
平屋は家事が楽になったり、家族との繋がりが自然と増えたりなどお金では決して買えないメリットが多数あります。勾配天井にすることで開放感溢れる生活空間を実現出来るなど、ゆとりのある暮らしができます。また、階段がないので子どもやお年寄りが安心して暮らす事が可能です。
人生100年時代、老後のことを考えるとバリアフリーが可能である平屋は生活する上でメリットは大きいでしょう。建築構造上、耐震性も高く安全に過ごす事ができます。予算や土地に余裕があれば是非、平屋を検討してみてはいかがでしょうか。
8. まとめ
今回は、近年なぜ平屋は脚光を浴びているのか?といった点を、平屋と2階建て住宅との比較を通して見てきました。平屋は階段がないことで、全ての空間がワンフロアに収まります。そのため、効率よい動線が作れることや屋外に出やすく、庭の雰囲気から自然を感じることも可能です。老後に向けてバリアフリーの間取りを検討しやすい点も人気の理由です。