注文住宅の最大の悩みの一つ「和室は必要か?」

せっかく注文住宅を作るのなら、和室を作るのは賛成です。しかし、仏間がいらない方や、小さな子供がいらっしゃらない方であれば、作らないという選択肢もありになります。今回は、和室を作る事のメリットだけでなく、デメリットにも目を向けていますので是非、内容を勘案して決めて頂けたらと思います。

この記事は約8分で読めます。

  1. 乳児や幼児がいるなら和室のメリットは大きい
  2. その他の和室のメリット
  3. 和室のデメリット
  4. 和室の最大のデメリット-スペースが取れなくなる問題を緩和するには
  5. 和室がなくても畳の床でくつろげる
  6. 和室を作る際の注意点
  7. まとめ

 

1. 乳児や幼児がいるなら和室のメリットは大きい

株式会社住環境研究所の調査によると、2016年度で「20~40代の単世帯家族」をターゲットにして間取りの変化や現状の調査を行ったところ、25.3%の家が新築時に和室を作らなかったという結果になりました。

畳ルームの採用率は若い世代ほど高い

年代別に焦点を当ててみていくと、20代で「畳あり」のご家庭は76%と高く、次いで30代が75.2%、40代で70.6%という結果です。このことから、若い世代ほど畳の必要性を感じている事が分かります。それは、何故でしょうか。

和室を必要とする状況、最大のポイントは育児です。小さなお子様がいる家庭では、畳はお昼寝・遊ぶ場所・おむつ替え・着替え・寝室として幅広く使用でき好まれるため、出産や子育てが集中する20代、30代での採用率が高いと考えられています。

株式会社住環境研究所の調査でも、年代が上がるごとに和室を作らない傾向が裏付けられています。和室を洋室にするリフォームはよくありますが、その逆はほとんどない事もこれが主な理由です。

 

ちなみに欧米では

ちなみに、家の中で靴を脱がない欧米ではどうしているのでしょうか?日本とは違い、欧米では土足のまま室内に入るのが当たり前の文化です。玄関で靴を脱ぎ、室内履きに履き替えるという事も、あまり聞きません。ですから、欧米では土足の床に赤ちゃんが寝転がっているのが日常です。

それは、家の中だけでなく、図書館や児童館などの公共施設でも同様になります。そのような場面では、小さな子供や赤ちゃんが地べたを這いずり回っていたりしますが、みんな土足で普通に横切っているのですから、私達日本人からすると、驚く光景かもしれません。

小さな子供や赤ちゃんが、床に落ちているものをなめまわしたりして不安になりますが、その辺は気にしないのが土足文化で、こうして子ども達も菌に強くなります。

 

2. その他の和室のメリット

ここまでは、乳児や幼児がいる家庭なら和室はメリットが大きい事を紹介してきましたが、その他のメリットにも目を向けてみましょう。

 

仏間が必要なら和室は必須

小さい頃から仏間があり、仏壇がある生活をしてきた方には和室は必要となってくるでしょう。仮に実家を出て、新しく家を建てても将来的に仏壇の管理や、親と同居の予定であれば、和室が必須です。

なぜ和室なのかというと、法事などでお坊さんが来た時には、親戚が集まってお線香をあげます。その点でも、和室であれば、皆が座りやすいメリットがあるからです。

畳の素材、「い草」の機能性をご存知でしょうか。調湿・調温効果でリラックスする事ができます。また、空気を浄化する効果もありますので、仏間などの神聖な場所としては、ぴったりです。

 

床に座る・ゴロゴロできる

和室有り派の方は、これが選ぶ理由の方も多いのかもしれません。畳は適度なクッション性もあり、寝転んでゴロゴロするのには最適です。逆に、フローリングにカーペットを敷いたとしても、同じような快適さは得られないと思います。

さらに、こたつを使用する際にも同様です。フローリングで、こたつを使うと床の冷たさが気になりますが、畳を使用することで床の冷気から体を守ってくれるでしょう。

 

汎用性の高さ

和室が魅力的なのは、その汎用性の高さにあります。例えば、仲の良い友人が遊びに来た時などは、リビングに通せますが、その他の急な来客時はごちゃごちゃしたリビングに通すわけにもいきません。そこで、畳の部屋に案内する事で客間として活用できます。

また、親戚や親が泊まる時にも、便利です。布団を敷く時には、寝心地のよい柔らかい畳に敷くことで、リラックスできます。

さらに、畳は家事スペースにもぴったりです。アイロンがけや洗濯物を畳むなど、自由に使える場として、色々な用途に使えるでしょう。

 

3. 和室のデメリット

ここまで和室のメリットについてお伝えしてきましたが、逆にデメリットを知る事も大切です。次のような点が挙げられます。

 

他の部屋のスペースが取れなくなる(特にリビング)

和室を作ることで、必然的に他の部屋は狭くなります。特にリビングです。なぜ、リビングかと申しますと、リビングの横に和室を作る傾向が多いからです。

その理由は、子供が小さいうちは、畳で育児がしやすく、キッチンがあるリビングでママが家事を行っていても、目の届く範囲に子供を遊ばせておきやすいので、そのためリビングの横のお部屋は和室が多いのです。

また、和室を客間として使用する目的で作る際には、使用する頻度も少ないのでスペースがもったいないと感じる事もあります。

 

畳・ふすまはメンテナンスが必要→費用がかかる

畳の最大のデメリットは、こちらが原因になるでしょう。10年もしないうちに、畳表の張替えが必要です。また、襖や障子は破れやすいという難点もあります。さらに、汚れやすいので、掃除が欠かせません。

ここで少し、費用の相場を見てみます。「裏返し」は、一日で作業は終わりますが、1畳あたり4,000円前後のコストがかかります。

「表替え」も同様、一日で作業が終わる事がほとんどですが、料金は1畳あたり5,000~20,000円前後です。

「新調」の作業は2~10日間で、価格は1畳につき約10,000~35,000円であり、高級品を使用する場合は、さらに高額になります。

その他のメンテナンスとしては、定期的に換気や掃除が欠かせません。その理由は、カビやダニが発生しやすくなるためです。

 

ペットを飼っていると汚れたり畳が破損することがある

トイレのしつけがきちんとできていない場合、粗相をされて汚れが目立つだけでなく、臭いも染み付いてしまう原因になります。また、しつけは適切でも、マーキングとしておしっこをかける可能性もゼロではありませんので、トレーニングをしっかりしておく必要があるでしょう。

さらに、ストレス発散で畳を傷つけてしまう事もありますし、歯が痒い時期の子犬などは、畳を噛んでしまう事もあります。寝床を整えるため、畳を引っかいてしまうペットも多いでしょう。

 

ソファーやベッド、タンスなどを置くとへこむ

重い家具を畳の上に設置してしまうと、家具の足に強い圧力がかかり、どうしても跡が付いてしまいます。跡が付きにくくなるグッズも有りますが、置ける家具は限られてくるでしょう。フローリングと比べると、畳は家具の凹みが付きやすいのが難点です。

 

4. 和室の最大のデメリット-スペースが取れなくなる問題を緩和するには

ここまで、和室のデメリットをご紹介いたしました。しかし、このデメリットを少しでも和らげる方法もいくつか有りますので、ご紹介したいと思います。是非、参考にされてください。

 

リビング続きの和室をつくる

この和室は、部屋と部屋の間の壁をあえて作らずに、オープンにしたお部屋になります。もちろん仕切りが必要な際には、襖や障子でゆるやかに仕切ることが可能です。仕切りが不要な場合では空間を繋げて、開放的なスペースをつくることが出来る点が強みでしょう。

配置スタイルはリビング横になりますので、ご希望の使い勝手に併せて、広さや配置は変わります。約3~4.5畳の小さなスペースや、約6畳~8畳の一部屋分のスペースまで幅広いです。リビング続き和室は、生活に合わせて設計も自由にできるという事です。

例えば、座卓テーブルを取り付ければ、セカンドリビングに早変わりしますし、ゆったりと横になって休める場所として自由に活用できます。

床にそのまま寝転がることができますので、小さなお子様の遊び場としても安心でしょう。ローテーブルを置いてしまえば、床は畳ですので直接座ってお仕事にも取り組めます。家事を行う場所としても快適です。

来客時には、障子や襖の引き戸を閉めて個室に早変わりできる間取りで、利便性があります。様々なシーンに合わせて、2続きの広い空間が個室にも大空間にも変化できるのが強みです。

 

人気の小上がり和室も検討

床面に高さを設けて小上がり設計にした和室の事を「小上がり和室」と言います。

この設計は、家の中にメリハリが生まれるため、立体感を楽しむことが出来ます。

また、見た目もおしゃれな空間を演出できますので、とても人気です。畳の色を工夫する事で、洋風の家にも調和するのが魅力でしょう。さらに、もう一つのメリットとしては、段差を活かして座ったりするだけでなく、収納部分を作る事ができるのも、大きなポイントです。

このように、小上がり和室は現代風の和室を作り、リビングとの一体感を出す事ができます。

 

5.和室がなくても畳の床でくつろげる

どうしても和室が作れない方に、何か他に別の方法はあるのでしょうか。答えはYESです。近年では、畳の快適さを気軽に楽しむ事ができます。それは、「置き畳」を活用することです。

置き畳は、並べるだけで平易にくつろぎの空間をつくれます。床に寝転びたいといったニーズを満たすだけなら、置き畳をリビングに置いてゴロゴロする方法もあるでしょう。

 

6.和室を作る際の注意点

素足でここちよい優しい肌触り、寝転び足を伸ばしてくつろげる空間。日本古来の床材、「畳」にはたくさんの魅力がある事がお分かり頂けた事でしょう。

ここで、2017年に行った、とある注文住宅のアンケートをご紹介させていただくと、自宅に和室は必要だと思いますか?の問いに、73%と多くの方が必要と答えました。

せっかくの注文住宅、和室も揃えて快適な生活を送りたいとは誰もが思います。では、実際に和室を作るうえで注意すべき事は何なのでしょうか。

 

客間として4畳半といった狭い和室は使い勝手が悪い

和室を客間としての目的で作る場合には、ある程度の広さは必要でしょう。組み合わせ的には、4.5畳・6畳・8畳が一般的です。そこで、選択肢として4.5畳だと、客間としては狭くて落ち着かないため、あまりお勧めではありません。

しかし、一部屋として認識せず、LDKと続く畳空間として活用するなら生活スタイルにもよりますが、あっても良いかもしれません。

 

水回りの導線に和室を配置しない(床が濡れる)

注文住宅を作る際に、特に重要になるのが水回りの導線になります。台所や洗濯、浴槽などの間取りは生活の快適さに直結してくるからです。そこで、さらに気を付けて頂きたいことは、水回りの導線の効率化を考慮するとともに、この導線に和室を設置しないことです。

理由は明快で、床が濡れてしまう可能性を防ぐためです。

 

ペットに配慮する

ペットを飼う際には、様々な面で注意が必要となるでしょう。1つ目に挙げられるのが、臭いの染みつきです。トイレトレーニングは、しっかりと行う事が大切です。

畳以外の他の部屋に、犬用トイレを設置することをお勧めします。また、マーキング対策グッズを利用するのも効果的です。

2つ目に、好奇心旺盛な時期の子犬は畳を傷付けてしまう可能性もあります。それだけでなく、寝床を整えるために、畳を引っ掻いたり掘ったりする場合も少なくありません。

そして3つ目の特に気を付けておきたい事が、畳を食べてしまう可能性がある事を頭に入れておくとともに配慮が必要になります。

対策としては、ペットが引っ掻いても畳が傷つかないように、敷物を敷くことで防ぐ方法があります。これによって誤飲対策だけでなく、引っ掻きによる破損を防ぐ事ができるでしょう。

最後に、近年ではペット専用畳が販売されています。そのメリットは、滑りにくく抜け毛が付きにくい加工がされている点です。消臭・抗菌加工も施されていて、臭い対策もされています。

加えて通常の畳よりも耐水性に優れ、排泄後の後片付けも比較的簡単です。

 

 

7. まとめ

注文住宅を作る際に、和室は必要か否かについてメリットとデメリットを見てきました。仏間がいらない、小さなお子様がいらっしゃらない方であれば必ずしも必要とは限りません。

しかし、和室を求める方が多い事は確かですし、汎用性があり、便利で生活をより快適にしてくれる事は間違いありません。今回の内容が、プランを検討頂く際の参考になれば幸いです。